Classici giapponesi con furigana
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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
Leggi ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) di 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 132.905 caratteri · 262 schermate
サッとあがる飛沫、ものものしい緊張の一瞬!
こうして、上首尾の時は、輝く大鱗が、河原へ引き上げられる。激しい流水の抵抗を、極度に避けた、幅にくらべて厚味の少ない、スラリとした全身には、藍け紫の透明な鱗が、ぬらぬら光り、その一重下から、さえた血紅色が斑らをなして、あざらかににじみ出る。無残に破れた創口からは、血の匂いと苔の香が、妙になまなましく交り合って、しんと身にしみる。中には、磨り上げた宝石も及ばぬほど、美しい卵の、あわれ、あふれ出て止まないのもある。漁夫の去ったあとの岩間に、そのこぼれが、点々と光っているのは、恨み深い気がする。
もとより、この魚どもは、大切な産卵の役目を果すため、この激流に逆らって、はるばる上ってくるのだ。流れが少し勢いをゆるめた、岸の浅瀬に、ところどころ、子供のかい掘りの跡のような凹みが見られる、それがこの魚の産卵の場所であった。雌魚はこうした処を選んで、まず己れの尾で、比較的細かい岩片を、中流の方へと掃き出す。そこで浅い一つの溝ができる。その底に現われ出た、新らしい岩片の上へ、卵を産みつけるのだという。それは、古い岩片はみな多少、苔を被っているため、卵がうまく附着しないからで、同時に、片寄せた古い石は、堤防の形となり、水勢を幾分か弱めて、卵の流失を防ぐに役立つ、と言われている。