Classici giapponesi con furigana
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かげろうのにっき
かげろうの日記
堀 辰雄
Leggi かげろうの日記 (かげろうのにっき) di 堀 辰雄 (ほりたつお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 30.890 caratteri · 60 schermate
とお言いつけなさりも果てぬうちに、もうあの方はお立ちになったままで、そこいらに散らばっていた物なんぞを御自分で取り集められ出した。そうしていつの間にか其処に寄せられたお車の中へそれをみんな入れさせ、それからその居間に引いてあった軟障までも御はずしになり出していた。
私が呆れて物も言えずにそれを見ていると、人々は互に目食わせしたりしながら、笑を含んで、そういう私の方を見守っているらしかった。「こうしてしまったら、此処をお出でになるより外はあるまい。まあ、み仏にもよくわけを申し上げると好い、それが作法のようだから――」などと、あの方は事もあろうにそんな常談まで仰ゃっていた。私はもう一と言も口がきけず、車の支度がすっかり出来てしまってからも、いつまでもじっと身じろぎもせずにいた。
あの方の入らしったのは申の刻頃だったのに、もう火ともし頃になってしまっていた。しかしまだ私がなかなか動きそうにもなかったので「よしよし、おれは先へ往くぞ。あとは、大夫、お前に任せる」と道綱にお言いになって、ずんずん先に出て往かれた。道綱は「早くなさいませ」と私の手をとって、いまにも泣きそうにしていた。