Classici giapponesi con furigana
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すみだがわ
すみだ川・新橋夜話 他一篇
永井 荷風
Leggi すみだ川・新橋夜話 他一篇 (すみだがわ) di 永井 荷風 (ながいかふう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 44.378 caratteri · 88 schermate
に浮いているばかり、見渡す隅田川は再びひろびろとしたばかりか静に淋しくなった。遥か川上の空のはずれに夏の名残を示す雲の峰が立っていて細い稲妻が絶間なく閃めいては消える。
長吉は先刻から一人ぼんやりして、或時は今戸橋の欄干に凭れたり、或時は岸の石垣から渡場の桟橋へ下りて見たりして、夕日から黄昏、黄昏から夜になる河の景色を眺めていた。今夜暗くなって人の顔がよくは見えない時分になったら今戸橋の上でお糸と逢う約束をしたからである。しかし丁度日曜日に当って夜学校を口実にも出来ない処から夕飯を済すが否やまだ日の落ちぬ中ふいと家を出てしまった。一しきり渡場へ急ぐ人の往来も今では殆ど絶え、橋の下に夜泊りする荷船の燈火が慶養寺の高い木立を倒に映した山谷堀の水に美しく流れた。門口に柳のある新しい二階家からは三味線が聞えて、水に添う低い小家の格子戸外には裸体の亭主が涼みに出はじめた。長吉はもう来る時分であろうと思って一心に橋向うを眺めた。
最初に橋を渡って来た人影は黒い麻の僧衣を着た坊主であった。つづいて尻端折の股引にゴム靴をはいた請負師らしい男の通った後、暫くしてから、蝙蝠傘と小包を提げた貧し気な女房が日和下駄で色気もなく砂を蹴立てて大股に歩いて行った。