Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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すみだがわ

すみだ川・新橋夜話 他一篇

永井 荷風

Leggi すみだ川・新橋夜話 他一篇 (すみだがわ) di 永井 荷風 (ながいかふう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 44.378 caratteri · 88 schermate

Aozora Bunko

秋。ああ秋だ。長吉は初めて秋というものはなるほどいやなものだ。実に淋しくって堪らないものだと身にしみじみ感じた。

学校はもう昨日から始っている。朝早く母親の用意してくれる弁当箱を書物と一所に包んで家を出て見たが、二日目三日目にはつくづく遠い神田まで歩いて行く気力がなくなった。今までは毎年長い夏休みの終る頃といえば学校の教場が何となく恋しく授業の開始する日が心待に待たれるようであった。そのういういしい心持はもう全く消えてしまった。つまらない。学問なんぞしたってつまるものか。学校は己れの望むような幸福を与える処ではない。……幸福とは無関係のものである事を長吉は物新しく感じた。

四日目の朝いつものように七時前に家を出て観音の境内まで歩いて来たが、長吉はまるで疲れきった旅人が路傍の石に腰をかけるように、本堂の横手のベンチの上に腰を下した。いつの間に掃除をしたものか朝露に湿った小砂利の上には、投捨てた汚い紙片もなく、朝早い境内はいつもの雑沓に引かえて妙に広く神々しく寂としている。本堂の廊下には此処で夜明ししたらしい迂散な男が今だに幾人も腰をかけていて、その中には垢じみた単衣の三尺帯を解いて平気で褌をしめ直している奴もあった。