Classici giapponesi con furigana
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すみだがわ
すみだ川・新橋夜話 他一篇
永井 荷風
Leggi すみだ川・新橋夜話 他一篇 (すみだがわ) di 永井 荷風 (ながいかふう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 44.378 caratteri · 88 schermate
十
半次郎が雨の夜の怪談に始めてお糸の手を取ったのもやはりかかる家の一間であったろう。長吉は何ともいえぬ恍惚と悲哀とを感じた。あの甘くして柔かく、忽ちにして冷淡な無頓着な運命の手に弄ばれたい、という止みがたい空想に駆られた。空想の翼のひろがるだけ、春の青空が以前よりも青く広く目に映じる。遠くの方から飴売の朝鮮笛が響き出した。笛の音は思いがけない処で、妙な節をつけて音調を低めるのが、言葉にいえない幽愁を催させる。
長吉は今まで胸に蟠った伯父に対する不満を暫く忘れた。現実の苦悶を暫く忘れた……。
十
気候が夏の末から秋に移って行く時と同じよう、春の末から夏の始めにかけては、折々大雨が降つづく。千束町から吉原田圃は珍しくもなく例年の通りに水が出た。本所も同じように所々に出水したそうで、蘿月はお豊の住む今戸の近辺はどうであったかと、二、三日過ぎてから、所用の帰りの夕方に見舞に来て見ると、出水の方は無事であった代りに、それよりも、もっと意外な災難にびっくりしてしまった。甥の長吉が釣台で、今しも本所の避病院に送られようという騒の最中である。母親のお豊は長吉が初袷の薄着をしたまま、千束町近辺の出水の混雑を見にと夕方から夜おそくまで、泥水の中を歩き廻ったために、その夜から風邪をひいて忽ち腸窒扶斯になったのだという医者の説明を