Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ちくしょうだに

ちくしょう谷

山本 周五郎

Leggi ちくしょう谷 (ちくしょうだに) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 69.788 caratteri · 138 schermate

Aozora Bunko

十二

隼人は耳もかさずに歩き続けた。

「云うわ、先生」あやは息をきらせながら、追いついて隼人の袖を掴んだ、「先生があたしのこと嫌いでも、あたしは先生が好きだから云うわ」

隼人は立停ってあやを見た、「私はおまえが嫌いではない、おまえはきれいだし温和しい賢い娘だ、しかし、いまのようなことをするあやは嫌いだ」

「あたしのことを嫌いじゃないの」

「いつものあやは嫌いではない」

「それなら、抱いて可愛がってもらうことがどうしていけないの、誰だってそうしているのに、先生だけどうしてそんなにいやがるの、なぜなの」

十二

隼人はあやの眼をみつめた、「大事な話というのはそのことか」

あやは唇を噛んで黙った。隼人は歩きだそうとした。あやは走って彼の前へまわり、大きな眼で彼を見あげた。

「おしつんぼのいちが」とあやは云った、「夜なかに権八のところへ喰べ物を届けるって、このまえ云ったこと覚えてるでしょ」

「覚えている」と隼人は頷いた。

「あれは間違ってたんです、届けるのは権八のところじゃなく、べつの人なんです」

隼人は黙っていた。

「本当のこと云うんですからちゃんと聞いて下さい、あたしこのあいだの晩、いちのあとを跟けていったんです」