Classici giapponesi con furigana
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ばちあたり
ばちあたり
山本 周五郎
Leggi ばちあたり di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 22.391 caratteri · 44 schermate
中川があらわれたのは、敗戦の年の二月であった。鉄兜に汚れた国民服で、雑嚢を肩に掛け、髭だらけの顔は青ぐろくむくんでいて、中川だと名のられても、すぐには誰だか判別がつかなかった。彼は母の部屋で二時間ばかり話しこみ、夕方になると、握りめしを包んでもらってたち去った。おそらく門のところで会ったのだろう、入れ違いに敏夫が帰って来た。中学二年生の彼は勤労動員で、芝の浜松町にある木工工場へ通勤していたのだが、靴をぬいであがるとすぐに、いまの人は誰だ、と私に訊いた。
――かあさんの親類の人だ。
――ふーん、汚ねえ親類だな。
敏夫はそう云ってから首をかしげた。
――ぼくのこと知ってるかい。
知らないだろう、ちょっとのあいだうちにいたことはあるが、おまえの生れるまえのことだからな、と私は答えた。
――だって、大きくなったなって云って、ぼくの顔をいやにじろじろ見ていたぜ。
ふしぎなことはない。親類なら手紙のやりとりはあったろうし、敏夫の生れたことぐらい知っているのは当然であろう。私はそう思いながら、それと同時に、漠然と昔のことを思いだした。二階からおりて来た中川を見て、どきっとしたときのことを、――それは「思いだした」