Classici giapponesi con furigana
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ばちあたり
ばちあたり
山本 周五郎
Leggi ばちあたり di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 22.391 caratteri · 44 schermate
と啓三が云った、「あたしはゆうべ殆んど眠ってないんですがね」
「あたしは独りでもいくわよ」
啓三は私の顔を見てひょいと肩をすくめた。いつもながらそういう身振りを見るといやになる、自分では気がつかないようだが、すぐに人の肩を叩いたり握手を求めたり、大げさな身振りをしたりすることは、彼のためにマイナスになっているのだ。
――マイナスか。
暫らくして、私は心の中でそう呟やいた。おれの生活も同じことじゃないか、いまの私は自分が望んでいた私ではない、病人を診察し治療する毎日、夜でさえ自由になる時間の少ないこの生活は、本来そうあるべき自分にとってはマイナスである。おかしなことだ、啓三も口で云っているのとは反対に、仕事はいつも躓ずきを繰り返している。室町の矢田も去年あたりから彼を避けているらしいし、当人にもそろそろ仲買という仕事に飽きたようすがみえる。そうではないかもしれないが、彼の動静から察すると、私にはもう時期の問題のように思えるのである。
――そしていま、敏夫のことがひっかかってきた。
そこまで考えたとき、まるでそれを耳で聞きでもしたように、姉と話していた啓三がこっちへ向き直った。