Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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わかむらさき

わか紫

泉 鏡花

Leggi わか紫 (わかむらさき) di 泉 鏡花 (いずみきょうか) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 37.708 caratteri · 75 schermate

Aozora Bunko

ならず、素足に草履穿占めた、爪尖の薄紅。石高路を物ともせず、独り早朝の霜を踏む。

山懐のところどころ、一帯に産出する蜜柑の林に射入る旭に、金色の露暖かなれど、岩の衝と突出でた海の上に臨んでは、路の下を掻い潜って、崖の尾花を越す浪に、有明月の影の砕くる、冬の朝まだ七時というのに、早や吉浜を過ぎ、真鶴を越して、江の浦さして行く途中。

灰色の網の中空から斜めに颯と張ったよう、中だるみに四方濶と、峰の開けた処がある。中に一条、つるくさ交りの茅萱高く、生命を搦むと芭蕉の句の桟橋というものめきて、奈落へ落るかと谷底へ、すぐに前面の峠の松へ、蔦蔓で釣ったように攀ずる故道の、細々と通じているのが、函嶺の裏関所の旧跡である。

娘はここへ来るまでに、ただその一台を見た、熱海通いの人車鉄道、また人力車など通うにも、上の新道を行くのであって、この旧道を突切れば、萩の株に狼の屎こそ見ゆれ、ものの一里半ばかり近いという、十年の昔といわず、七八年以前までは駕籠で辿った路であろう。

もとより恐るる処にあらず。

娘はかねて聞いて来た、近道をするつもりの、峰の松を目的に、此方の道の分れ口、一むら薄立枯れて、荒野の草の埋れ井に、朦朧として彳むごとき、双の影ありと見えたるにも、猶予わず衝と寄った。