Classici giapponesi con furigana
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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
Leggi アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) di 渡辺 温 (わたなべおん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.168 caratteri · 267 schermate
その度に彼女は気を留めて隣の三本煙突を見た。赤い小さい煙突は決して煙を吐いていなかった。
(――可哀相なあたしの煙突!……)
彼女は白いレースの飾のしてある枕に泪を滾しながら、赤い煙突と彼女自身の身の上を憐んだ。彼女は子供心にも、こんなに体が弱くては到底父親や母親のように大きく成ることは出来ないだろうと思っていた。
彼女は十六になった。痩せて蒼白い頬に仄かな紅みがさして、彼女は美しい脆弱な花のような少女であった。
今彼女は寝床から起き上って窓敷居に凭りかかっていた。彼女は風邪をひいて寝ていたのだが、もう殆どよかった。
夏が近く、日暮に間もない空が、ライラック色と薔薇花とのだんだらに染まって見えた。隣の邸の周囲には背の低い立木が隙間もなく若葉を繁らせて、その上から屋根がほんの僅かと三本の煙突とがのぞかれた。煙突はもう大分古くなって煤けていた。併し、この頃の季節に朝や夕方煙を出すのは矢張り両側の二本だけであった。
彼女はその年になってもなお真中の小さい煙突を哀れに思うことをやめなかった。
(あたしの赤い煙突。なぜ煙を吐かないの?……お父さまとお母さまとの煙突はあんなにどっさり煙を吐いているのに……可哀相なあたしの赤い煙突!)