Classici giapponesi con furigana
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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
Leggi アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) di 渡辺 温 (わたなべおん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.168 caratteri · 267 schermate
シルクハット
私も中村も給料が十円ずつ上がった。
私は私のかぶり古した山高帽子を中村に十円で譲って、そしてそれに十五円足して、シルクハットを買った。
青年時代に一度、シルクハットをかぶってみたい――と、私は永いことそう思っていた。シルクハットのもつ贅沢な気品を、自分の頭の上に載せて見たくてたまらなかった。
私は天鵞絨の小さなクッションで幾度もシルクハットのけばを撫でた。帽子舗の店さきの明るい花電燈を照り返している鏡の中で、シルクハットは却々よく私に似合った。
また中村は自分の古ぼけた黒羅紗の帽子をカバンの中へおし込んで、山高帽子を冠った。ムッソリニのような顔に見えた。
私共は、それから、行きつけの港の、砂浜にあるパブリック・ホテルへ女を買いに出かけた。その日は私共の給料日で私共は乏しい収入をさいて、月にたった一度だけ女を楽しむことにきめていたのである。
シルクハットは果してホテルの女たちをおどろかした。私の女はとりわけ眼を瞠って、むしろドギマギしたように私を見た。彼女は一月の中に見違うばかり蒼くやつれてしまっていた。もとから病気持ちらしい彼女だったので、屹度ひどい病いでもしたのであろう。