Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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アンドロギュノスのちすじ

アンドロギュノスの裔

渡辺 温

Leggi アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) di 渡辺 温 (わたなべおん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.168 caratteri · 267 schermate

Aozora Bunko

青年は彼女の体のために運動が必要だと云ってはお天気のいい日ならば必ず彼女を散歩に誘った。彼女の両親もそれを気にかけはしなかった。むしろ殆ど満足な遊び友達も得られない程病弱な一人娘をそんなにも可愛がってくれるのを喜んだ。(なに、安心だよ。何しろ未だほんのねんねえなんだからな――)と彼女の父親は母親にそう云った。病身な彼女は全く体も心もたしかに二三年は幼かった。彼女は青年の手につかまりながら往来を歩いた。

彼等は散歩と云うと大抵町端れの月見草が一っぱい生えている丘へ行った。「月見ヶ丘」と町の人は呼んでいた。秋になって月を見るのにもいい丘であったから。……その丘からは港の瑠璃色の海や、船着場の黄色い旗や、また彼女の家や青年の邸も悉く手に取るように一眸の中におさめられた。

青年は何よりも歌を唄うことが得意だったと見えて、丘のきりぎしに立つといつでも唄った。彼女はおとなしく歌を聞きながら町の方をじっとながめていた。そして若しも青年の歌が悲しいメロディを持っている時なぞには、忽ち彼女の大きな眼に泪が溢れて来た。青年はそれに気がつくとびっくりして歌を止めてたずねた。