Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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アンドロギュノスのちすじ

アンドロギュノスの裔

渡辺 温

Leggi アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) di 渡辺 温 (わたなべおん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.168 caratteri · 267 schermate

Aozora Bunko

『これを買ってお上げなさい。値段は――持っていますか?』

H――氏は正札と見比べるように、私の財布の中味を覗き込んだ。

『恰度。すっかりハタかなければなりません――もう少し廉いのではいけないでしょうか?』

『困るなあ。――』H――氏は横を向いて眉をひそめた。

『金銭に淡白になれないロマンティストなんて、鼻もちになったものではない…』そこで、私は到頭この高価な買物を余儀なくさせられた。宝石屋の店を出ると、うなだれがちな私を引き立てるように、晴々とした調子で彼は云った。

『何にしても、これなら先方だって充分嬉しがるに違いない。幸福な婦人だ。ところで、その淑女は、僕などの無論知らない人でしょうな。』

『いや……』私は口ごもった。『いや、実はあの「星の花」と今晩一緒に遊びに行く約束をしたのです。』

するとH――氏は、ひどく吃驚した様子で立ち止まった。

『これはしたり! いやはや、そんなことと知っていたなら、僕は何もこんなお人好しの役目を仰せつかるのではなかった。あの女は実に怪しからぬ奴です……』

H――氏は激昂のあまり息を切らせながら云うのであった。『正直なことを白状すれば、あの女は僕と夙に夫婦約束がしてあるのです。