Classici giapponesi con furigana
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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
Leggi アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) di 渡辺 温 (わたなべおん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.168 caratteri · 267 schermate
さて、父にせかれて仕立下ろしのフランネルの衣物に着換えた私は、これも今日はじめて見る香い高い新しい麦わら帽子をかぶって、赤色のネクタイを結んだ父と連れだって家を出た。
はつ夏の早い朝の空は藍と薔薇色とのだんだらに染まって、その下の町並の家々は、大方未だひっそりとして眠っていた。
停車場へ行く人気のない大通りを父はステッキを振りまわしながら歩いた。
「誰にも出遇わなくて幸だ。」と父は独言を云った。
「なぜ?」と私はきいた。
父は返事をしなかった。
だが、その代りに父はまた独言を云った。
「ほんとにいやな息子だ。十ちがいの親子だなんて! ああ俺も倦き倦きしたよ。」
「なぜ!」私は父の顔をのぞき込んできいた。
父は、併し、私の声が聞こえなかったものか、黙ってにやにや笑っていた。
私は悲しくなって、父の腕に私の腕をからませた。ところが父はそれを邪慳に振り払った。そして声だけは殊の外やさしくこう窘めた。
「およしよ。君と僕とが兄弟だと思われても、また、困るからね。およしよ。」
私は赤色がかったネクタイを結んで、髭がなくて俄かにのっぺりとしてしまった父の顔に、性の悪い支那人のような表情をみとめた。