Classici giapponesi con furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Leggi キャラコさん di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 28.043 caratteri · 56 schermate
青豆のはいったどろどろのポタアジュが、衿から胸の中へ流れ込んで、飛びあがるほど熱いのを、そっと奥歯をかんでこらえた。
広い食堂の中には、まだ六、七組の客が残っていて、あっけにとられたような顔でこちらを眺めている。
キャラコさんは、長六閣下に、小さなことに見苦しく動ずるなと教えられている。キャラコさんにとってこれは大切な服だけれど、すぐホテルのランドリイへ出せばそんなにひどくなるはずはないし、もともと自分が笑ったのがいけないんだから、と、すぐ考えついて、素直に槇子にあやまった。
「マキちゃん、ごめんなさい。あたしが笑ったのが悪かったの」
槇子はそっぽを向いて返事もしない。麻耶子は痛快そうに、眼の隅からジロジロとキャラコさんの顔を眺め、沼間夫人は眉も動かさずに、ご自慢の白い手で静かにスプーンを使っている。
キャラコさんは、早く洗濯屋へ駆けつけたいのだが、中座していいものかどうかと迷っていると、いつの間にかうしろに秋作氏が来ていて、腕をとって椅子から立たしてくれた。
槇子はそれを見ると、いまにも痙攣けそうな物凄い顔になって、
「秋作、馬鹿ッ、馬鹿ッ」
と、叫びながら、二人を目がけて手当りまかせに食卓の上のものを投げつけ、投げるものがなくなると、こんどは自分の服をピリピリとひき裂き始めた。