Classici giapponesi con furigana
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いせのまき
伊勢之巻
泉 鏡花
Leggi 伊勢之巻 (いせのまき) di 泉 鏡花 (いずみきょうか) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 17.617 caratteri · 35 schermate
九
」と、いうと、腰を上げざまに襖を一枚、直ぐに縁側へ辷って出ると、呼吸を凝して二人ばかり居た、恐いもの見たさの徒、ばたり、ソッと退く気勢。
「や。」という番頭の声に連れて、足も裾も巴に入乱るるかのごとく、廊下を彼方へ、隔ってまた跫音、次第に跫音。この汐に、そこら中の人声を浚えて退いて、果は遥な戸外二階の突外れの角あたりと覚しかった、三味線の音がハタと留んだ。
聞澄して、里見夫人、裳を前へ捌こうとすると、うっかりした褄がかかって、引留められたようによろめいたが、衣裄に手をかけ、四辺をし、向うの押入をじっと見る、瞼に颯と薄紅梅。
九
煙草盆、枕、火鉢、座蒲団も五六枚。
(これは物置だ。)と立花は心付いた。
はじめは押入と、しかしそれにしては居周囲が広く、破れてはいるが、筵か、畳か敷いてもあり、心持四畳半、五畳、六畳ばかりもありそうな。手入をしない囲なぞの荒れたのを、そのまま押入に遣っているのであろう、身を忍ぶのは誂えたようであるが。
(待て。)
案内をして、やがて三由屋の女中が、見えなくなるが疾いか、ものをいうよりはまず唇の戦くまで、不義ではあるが思う同士。目を見交したばかりで、かねて算した通り、一先ず姿を隠したが、心の闇より暗かった押入の中が、こう物色の出来得るは、さては目が馴れたせいであろう。