Classici giapponesi con furigana
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クルスかんのん
十字架観音
野村 胡堂
Leggi 十字架観音 (クルスかんのん) di 野村 胡堂 (のむらこどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 13.655 caratteri · 27 schermate
七
「これ、つまらぬ事を言うな」
「あの頃は禁制といっても大したことはありませんでした。山形におる頃は、私も鹿の子様と一緒に、お祈ごっこをしたこともありますが、この節のようにやかましくなっては、うっかり真似事もなりません」
「もうそんな話は止めだ。それより、楯岡の家来共が、あれっ切り此処へ来ないのが不思議ではないか」
「ホ、ホホ」
「何を笑う」
「あれは皆んな私の細工とはお気がつきませんでしたか」
「何?」
「大急ぎで番場町へ帰った余吾之介様が憎らしいばかりに、町内の悪に少しばかり握らせて、あんな芝居を書きました」
「――――」
そう聞くと思い当ることばかり、余吾之介も、今更開いた口が塞がりません。
七
その晩、白鬚橋の襲撃は、余吾之介の方から言えば手違いだらけでした。
何を感じたか、あんなに血を見ることの好きなお秋は行かず、余吾之介一人出かけたのですが、――それは、なまじ足手纏がなくて反ってよかったとしても、相手の警備の行届いているのに驚いている頃は、巧妙に作られた罠に陥込んで、免れようもなく羽搏いていたのでした。
警固はない――という報告は、余吾之介をおびき寄せる為の詭計で、締りもない門に飛込むと、いきなり十人あまりの腕達者が、闇の大地から湧いたように余吾之介を取巻いてしまったのです。