Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ななしゆびものがたり

名なし指物語

新美 南吉

Leggi 名なし指物語 (ななしゆびものがたり) di Niimi Nankichi (新美 南吉) in giapponese con furigana. JLPT N4. Tocca una parola per il significato.

N4 · base · kanji e kana moderni · 10.312 caratteri · 21 schermate

Aozora Bunko

カシの木のはめ板に、コオロギが一ぴきとまっていて、マタンに話しかけるように鳴いていました。

さていよいよ休もうと思って、マタンがテーブルの引き出しをあけ、その中へ、ノミとツチをしまおうとしたとき、マタンは引き出しの中に、ふっくらとふくれたさいふを一つ、見つけたのでありました。

思いがけないことでした。マタンは、ぼんやりしてしまいました。だれのさいふでしょう。ゆうべこのへやにとまった人が、あわててわすれていったものでしょうか。ならばマタンが、このさいふをもらってしまったら、どうなるでしょう。だまって、じぶんのふところへ入れてしまえば、それまでのことではありませんか。いや今にも、わすれていった人がひきかえして、さいふをとりにくるかも知れません。今からすぐまどをおしあけ、にげてしまえばよいのです。

ぼんやりと、さいふに目をおとしているマタンの頭の中で、たくさんの声が、いろんなことを、めまぐるしいほど、しゃべりあいました。はめ板から、ゆかに落ちたコオロギまでが、なにかいっているようでありました。

「それはわるいことだ。それはわるいことだ。」

と、コオロギはうたっていました。