Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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めいじんじごく

名人地獄

国枝 史郎

Leggi 名人地獄 (めいじんじごく) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.286 caratteri · 301 schermate

Aozora Bunko

「ではなぜおれについて来ない?」「申し上げた筈でございます」

「お北!」と甚内はさぐるようにいった。「もし追分が未来永劫、お前の耳へ聞こえなくなったら、その時お前はどうするな?」「その時こそわたしというものはあなたの物でございます」「言葉に嘘はあるまいな」「何んのいつわり申しましょう」「その言葉忘れるなよ」「はいご念には及びませぬ」

甚内は満足したように、不思議な微笑を頬に浮かべた。……思えば奇怪な恋ではあった。これというさしたるあてもなく、追分宿へやって来て、本陣油屋へとまった夜、何気なくよんだ遊女に恋し、また遊女にも恋されながら、その女がいうことを聞かぬ。殺すといえば殺されようという。それほどの恋を持ちながら、にげようという男の言葉を、すげなく女はことわるのであった。外におとこがあるからでもあろうが、おとこその者には心をひかれず、その歌に心ひかれるのだという。立ち去るといえば立ち去れという。捨てたのかといえば捨てはしないという。そういう言葉には嘘はない。不思議な恋の三すくみ! 女が死ねば恋は終る。どっちか一人男が死ねば、いきた方が女を獲る。所詮一人は死ななければならない。