Classici giapponesi con furigana
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じごくふうけい
地獄風景
江戸川 乱歩
Leggi 地獄風景 (じごくふうけい) di 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 53.774 caratteri · 108 schermate
「だが、たった一人、殺されなかった者があるのですよ」
ふと気がつくと、大虐殺者治良右衛門が、ニコニコ笑って立っていた。
警官達の憎悪が爆発した。彼等は十何匹の蝗になって、物をも云わず、大悪魔に飛びついて行った。
「オットどっこい」
治良右衛門は、危く身をかわして、そこに下っている軽気球の繩梯子に飛びついた。そして、素早く上へ駈上りながら、
「殺されなかったのはね、僕の女房の鮎子ですよ。木下鮎子ですよ。あいつだけはどうも殺す気がしなかったのですよ。ごらんなさい。僕の女房がご挨拶していますよ」
見上げると、軽気球のゴンドラから、美しい鮎子の顔が、五色のテープを投げながら、警官達に笑いかけていた。
「ウヌ、逃がすものかッ」
「畜生めッ」
「馬鹿ッ! ご用だッ」
警官達は、狂気の様に、繩梯子を這い上った。先頭には治良右衛門、少し離れて木島刑事、それから制服巡査の十幾人が、空へ一列の鈴なりだ。
治良右衛門は、もう足の下の追手達をからかいもせず、黙々として、空の梯子を駈昇って行った。猿の様に早かった。
やがて十数丈の繩梯子も尽き、ゴンドラの中から鮎子の白い手が、治良右衛門を引き上げた。