Classici giapponesi con furigana
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こうふ
坑夫
Leggi 坑夫 (こうふ) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 141.690 caratteri · 283 schermate
それからまたあるき出した。だらだら坂を登ると、自然と顔が仰向になる。すると例の通り長屋から、坑夫が頬杖を突いて、自分を見下している。さっきまではあれほど厭に見えた顔がまるで土細工の人形の首のように思われる。醜くも、怖くも、憎らしくもない。ただの顔である。日本一の美人の顔がただの顔であるごとく、坑夫の顔もただの顔である。そう云う自分も骨と肉で出来たただの人間である。意味も何もない。
自分はこう云う状態で、無人の境を行くような心持で、親方の家までやって来た。案内を頼むと、うちから十五六の娘が、がらりと障子をあけて出た。こう云う娘がこんな所にいようはずがないんだから、平生ならはっと驚く訳だが、この時はまるで何の感じもなかった。ただ器械のように挨拶をすると、娘は片手を障子へ掛けたまま、奥を振り向いて、
「御父さん。御客」
と云った。自分はこの時、これが飯場頭の娘だなと合点したが、ただ合点したまでで、娘がまだそこに立っているのに、娘の事は忘れてしまった。ところへ親方が出て来た。
「どうしたい」
「行って来ました」
「健康診断を貰って来たかい。どれ」
自分は右の手に握っていた診断書を、つい忘れて、おやどこへやったろうかと、始めて気がついた。