Classici giapponesi con furigana
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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
Leggi 夜明け前 (よあけまえ) di 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 205.629 caratteri · 408 schermate
嘉永六年の黒船騒ぎ以来、続きに続いた一般人心の動揺も、震災の打撃のために一時取り沈められたようになった。もっとも、尾張藩主が江戸出府後の結果も明らかでなく、すでに下田の港は開かれたとのうわさも伝わり、交易を非とする諸藩の抗議には幕府の老中もただただ手をこまねいているとのうわさすらある。しかしこの地方としては、一時の混乱も静まりかけ、街道も次第に整理されて、米の値までも安くなった。
各村倹約の申し渡しとして、木曾福島からの三人の役人が巡回して来たころは、山里も震災のあとらしい。土地の人たちは正月の味噌搗きに取りかかるころから、その年の豊作を待ち構え、あるいは杉苗植え付けの相談なぞに余念もなかった。
ある一転機が半蔵の内部にもきざして来た。その年の三月には彼も父となっていた。お民は彼のそばで、二人の間に生まれた愛らしい女の子を抱くようになった。お粂というのがその子の名で、それまで彼の知らなかったちいさなものの動作や、物を求めるような泣き声や、無邪気なあくびや、無心なほほえみなぞが、なんとなく一人前になったという心持ちを父としての彼の胸の中によび起こすようになった。