Classici giapponesi con furigana
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ゆめのず
夢の図
豊島 与志雄
Leggi 夢の図 (ゆめのず) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 7101 caratteri · 15 schermate
蝦蟇にしても、人の手に捉えられる時には、くくくくと鳴声を立てるではないか。
彼女の髪を掴んでそこに引き据えた、そのとっさの意外な行為のうちに、木村は一種の夢をみる。宛も飛行機の空中戦を遠望するような光景である。彼自身が大きな機体となって、上空にまいあがってゆく。周囲から、多くの小さな機体が群がり迫ってくる。それを一つ一つ、彼は手先で払い落す。それがみな、女性の盲目な肉体なのであろうか。上空の高さは限りがなく、如何にまいあがっても、まだ足りない。小さな機体等が群がり迫ってきて、いつまでも果しがないのである。
その夢幻からさめて、彼が惘然としていると、秋子はもうそこに居ず、雑草の踏みしだかれた跡だけが残っている。それでよいのだ、と彼は自ら云う。あたしは待っておりましたなどと甘える、妖しい声ももうしなくなるだろう。未練とか口惜しさとかも、もうさっぱりとなくなるだろう。それでよいのだ。だが、彼はその辺を、薄暗がりのなかに探しまわる。もしや、彼女が傷ついて、その血が、血の一滴でも、こぼれていはしないだろうか。血の一滴をも見出し得なかった彼に、そのためか、夕闇の冷気と憂愁とが、しめやかに忍び寄ってくる……。