Classici giapponesi con furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠4
中里 介山
Leggi 大菩薩峠4 (だいぼさつとうげ) di 中里 介山 (なかざとかいざん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 264.133 caratteri · 524 schermate
嘘にも縁談のことは若い人の血汐を躍らせねばならぬものであります。けれどもお銀様にあっては必ずしもそうでありません。お銀様がだまって父の許から己が部屋へ帰ったのは、そのことの恥かしさから返事ができないで帰ったのではありません。
いつも怒気を含んだようなお銀様の面が、一層の怒気で曇って見えました。父のものやわらかな話半ばで、ついと立って挨拶もなくて立ちかえったその畳ざわりは荒いものでありました。父の伊太夫は、
「ははあ、また失策った」
というような面をして、立って行く娘の後ろ姿を空しく見送っているばかりであります。
お銀様が縁談を嫌うのは今に始まったことではありません。そのことを言い出されるのさえ、毒虫に触れることのようにいやがりました。お銀様は自分の身にかかる縁談のことを聞くのをいやがるばかりでなく、人の縁談のことを聞くのさえいやがりました。その話を聞くと、ジリジリと焦れてゆくのが目に見えるのであります。それだからお銀様の前で縁談を言うものはありません。お君も近ごろ来て、その呼吸をよく呑込んでおりました。父の伊太夫ももとよりそのことを知っていたけれども、市五郎の口前を信ずるの余りに、つい口に出してしまって、また娘の御機嫌を損ねたことに気がついて、気まずい思いをして空しく見送るばかりでありました。