Classici giapponesi con furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠7
中里 介山
Leggi 大菩薩峠7 (だいぼさつとうげ) di 中里 介山 (なかざとかいざん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 242.044 caratteri · 477 schermate
「先生がかわいそうだわ」
「どうも仕方がございません、助ける手段がねえのだから」
「先生も悪いわ、早く馬で逃げてしまえばよかったのに。ですけれども、そうすれば、わたしたちが直ぐにつかまってしまいます……でも、同じことなら、眼の見えない人より、眼の見える人が先に殺された方がよかったかも知れない」
「あ、人の足音がするようです、静かに――」
久助はお雪をかかえて、身体を固くする。
しかし、人の足音と思ったのは僻耳でしょう。そうでなければ表の戸を守っている主と、駕籠屋と、馬方とが身動きをしたのか、またそうでなければ、桔梗ヶ原から塚魔野へ、意地の悪い鴉が飛んで行く羽風であったかも知れない。
諏訪からのぼって来た人は、峠の上のこの騒ぎで、五条源治の立場あたりに食い止められているんだろう。塩尻からは、まだここへ通りかかるほどの早立ちの客がなかったものと見てよろしい。
それですから、いのじヶ原は空々寂々として、原林のような静けさ。まして雪もよいの陰鬱な天気。
ところで……高原の空気に冴ゆる剣の音も聞えない。吹き来るべき暴風が途中で沈没してしまったものか、或いは人の恐怖を出し抜いて、その頭上を通り越してしまったものか、いつまで経っても、一軒屋の表戸をおどろかすものがありません。