Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ぜにがたへいじとりものひかえ

奇譚 銭形平次 「銭形平次捕物控」傑作選

野村 胡堂

Leggi 奇譚 銭形平次 「銭形平次捕物控」傑作選 (ぜにがたへいじとりものひかえ) di 野村 胡堂 (のむらこどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 31.249 caratteri · 62 schermate

Aozora Bunko

「有難うございます」

精いっぱいの我慢が崩れて、ドッと青白い頬を洗う涙、平次は自分の口から出た、世間なみの悔みの言葉を後悔するばかりです。

隣の部屋――母親のお駒の死骸を置いてある部屋とは、廊下で距てられ、コジ開けた二枚の戸は片寄せてありますが、廊下に立つともう、プーンと血の臭い、疎い灯の下に、惨憺たる有様が展開するのです。

窓とは反対側の壁に凭れて、俯伏せに崩折れた死骸は、八五郎の手でしずかに起されました。ひと眼見た平次が、ギョッとしたほどの、それは凄まじい相好です。

四十五六の青黒く痩せた顔、眼はカッと宙を睨んで、頬から額に化石した苦悩の皺、眼鼻立は立派で、決して醜い方ではありませんが、ヒステリックで、陰惨で、偏執狂などによくある、歪んだ顔からくる不気味さは、二度と見る勇気がなくなります。

右寄の喉笛、今日の知識でいえば、見事に頸動脈をつらぬいた刃物は、やや細くて鋭利で、後ろ首まで切っ尖が抜けているのは、恐ろしい力で打ち込んだもので、決して女の自害ではありません。

従って満身に浴びた血、粗末な寝巻も、畳の床の上も、まさに血の海です。その身体が後ろから突きのめしたように、前に倒れているのは、断末魔の苦悩のせいでしょうか。