Classici giapponesi con furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
奇譚 銭形平次 「銭形平次捕物控」傑作選
野村 胡堂
Leggi 奇譚 銭形平次 「銭形平次捕物控」傑作選 (ぜにがたへいじとりものひかえ) di 野村 胡堂 (のむらこどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 31.249 caratteri · 62 schermate
二
「フーム、面白いな。番頭の言い草は『娘を口説け』と言わぬばかりだ。岡っ引なんてものは、あまり人様に好かれる稼業じゃないが」
平次は何やら考えております。
二
月のない、生暖かい晩でした。十月になったばかり、街々から霧が湧いて、長屋もドブ板も、生け垣も、妙に物々しく見える本郷の一角、開けておいたらしい裏木戸を押して、やや広い庭へ入ると、霧でぼかされた土蔵の壁を手捜りに、その庇の蔭へスルリと入りました。
申すまでもなく、八五郎の忍び姿、恋にしては、ひどく野暮な拵えです。
それから小半刻(一時間ほど)、上野の鐘が、霧に濡れて、びっくりするほど近く聴えました。その捨て鐘が撞き終った頃。
「もしへ、八五郎親分さん」
耳もとにささやく柔らかい声、聞き覚えのお君の、少し甘えた訴えです。
「お嬢さんか」
「お待ちになったでしょう」
「いや、今来たばかりさ」
八五郎はツイ、恋するもののように、軽い嘘をついてしまいました。
「で話というのは」
少し寄り添うようにすると、娘の体温が、ほんのりと夜の大気を温ませて、八五郎をこよなくロマンチックにしてしまいます。
「私は怖いんです、八五郎親分」