Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
ようちゅう
妖虫
江戸川 乱歩
Leggi 妖虫 (ようちゅう) di 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 120.290 caratteri · 239 schermate
万が一にも、助かる見込みなぞありはしない。頼みに思う父の操一氏は、麻酔の夢さめやらず、車の烈しい動揺も知らぬげに、眠りこんでいるし、運転手と助手とは、神経のない自動人形の様に、広い二つの背中を見せているばかりだし、窓の外は、もう一時に近い夜更け、しかも淋しい生垣道、通りかかる人もない。
絶体絶命の苦悩を通り越して、珠子は気が遠くなって行く様に感じた。そして、不思議なことには、毒虫の厚ぼったい鋏の圧力が、そのネットリとあぶらぎった感触が、烈しい動物の体臭が、寧ろ甘く好もしいものにさえ感じられた。
彼女は夢を見はじめたのだ。とりかえしのつかぬ恐ろしい悪夢にうなされはじめたのだ。
「ウフフ……、お嬢さん、どうしたんだね。馬鹿におとなしくなってしまったじゃないか」
悪魔が歓喜に震える嗄声で云った。
彼の大胆な二本の腕が、不恰好に伸びて、しなやかな肉塊をしめつけた。そして、醜い悪魔の顔と、紙の様に血の気の失せた美しい顔とが、目と目とが、唇と唇とが、五寸の近さで真正面に向き合った。
アア、一転瞬にして、珠子の穢を知らぬ、花びらの様な唇は、その気高い誇を失おうとしているのだ。