Classici giapponesi con furigana
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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
Leggi 完本 たぬき汁 (たぬきじる) di 佐藤 垢石 (さとうこうせき) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 133.158 caratteri · 273 schermate
にらみ鯛
悲しき副膳のお肴
万延元年の四月の末の方、世はもう、青葉に風が光る初夏の候であった。
京都所司代酒井若狭守忠義は、月並みの天機奉伺として参内した。ご用談が、予定以上に長くなって、灯がつく頃になっても禁裡を退出しなかった。侍従岩倉具視は、
(この機を逸しては――)
と、考えた。そして、久我建道と相談して、そっと女房を経て、御膳の『御した』のお下げを乞い、これを酒井に賜わった。『御した』というのは、主上ご食事の砌ご正膳の外に、副膳を奉るのであるが、その副膳のことを称えるのである。
酒井所司代は、恐懼して平伏し、さて恭々しく箸をとろうとしたところ、悪臭が鼻にくるのにびっくりして、箸を措いた。膳の上の魚の肉が、何れも古くなっていたからだ。
『これは、どうしたことか?』
と酒井はほんとうに不思議の思いをした。そこで、酒井はその場へ御膳吟味掛を呼んで、
『おそれ多いことではないか――』
と、詰問した。ところが岩倉は、横から御膳吟味掛の答弁を引き取って、
『酒井殿は、拙者の申したことを信用しない風であったが、きょうのことでそれがほんとうであったことが分かったであろうと思う。