Classici giapponesi con furigana
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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
Leggi 完本 たぬき汁 (たぬきじる) di 佐藤 垢石 (さとうこうせき) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 133.158 caratteri · 273 schermate
みやこ鳥
一
この正月の、西北の風が吹くある寒い朝、ちょっとした用事があって、両国橋を西から東へわたったことがあった。
橋のたもとから十五、六歩足を運んだ時、ふと水の上へ眼をやった。すると、大川と神田川が合流する柳橋の龜清の石垣の下の静かな波の上に、白いものが浮いているのを見た。私は、欄干によりかかって、しばらくそれに眺め入った。白いものは、かもめであった。
十数羽のかもめの群れは、思い思いの方へ向いて、眠ってでもいるように緩やかにうねる水にゆらゆらと揺られている。ところが、大きなかもめの群れのなかに形の小さいゆりかもめが、薄くれないの嘴をときどき私の方へ向けるのを、眼にとめた。
――みやこ鳥――
私は、ほんとうに偶然、途上で昔の友に行きあったような思いがした。
――遠い日の、みやこ鳥――
三十年近くも前の、私の若き頃の身の俤が、ひとりで幻想となって眼の底に浮かんできた。改めて、私はゆりかもめをみつめた。
眼がさめると、私は淀川堤の暁の若草の上に、横になっているのに気がついた。
――何だ、自殺も忘れていたのか!――
私は、昨日の夕べのことを顧みた。