Classici giapponesi con furigana
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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
Leggi 完本 たぬき汁 (たぬきじる) di 佐藤 垢石 (さとうこうせき) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 133.158 caratteri · 273 schermate
姫柚子の讃
このほど、最上川の支流小国川の岸辺から湧く瀬見温泉へ旅したとき、宿で鰍の丸煮を肴に出してくれた。まだ彼岸に入ったばかりであるというのに、もう北羽州の峡間に臨むこの温泉の村は秋たけて、崖にはう真葛の葉にも露おかせ、障子の穴を通う冷風が肌にわびしい。私は流れに沿った一室に綿の入った褞袍にくるまり、小杯を相手として静かに鰍の漿を耽味したのであった。
折りから訪ねてきた一釣友に、この小国川は鮎ばかりでなく鰍にも名のある渓であるときいた。小国川は昔、判官義経主従が都を追われ、越路をめぐって羽前の国の土を踏み、柿色の篠懸に初夏の風をなびかせて、最上川の緑を縫った棧道をさかのぼり、陸奥の藤原領へ越える峠の一夜、足をとどめた生月の村の方からくる源遠き峡水であるから、ここに棲む鰍の味が肥えているのは当然のことであろうと思ったのである。そこで私は、この丸煮よりも鰍膾の淡白を所望したのであるけれど、生憎このごろは漁師が川業を休んでいるために、活き鰍が市場へ現われてこぬとのことであった。残念ながら、いたしかたない。それにつけて思いだしたのは、わが故郷奥利根川の鰍である。