Classici giapponesi con furigana
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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
Leggi 寺田寅彦随筆集 第一巻 (どんぐり) di 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 203.161 caratteri · 412 schermate
である。要するに一面の鏡だけでは永久に自分の顔は見られないという事に気がついたのである。二枚の鏡を使って少し斜めに向いた顔を見る事はできるだろうがそれを実行するのはおっくうであったし、また自分の技量で左右の相違をかき分ける事もできそうになかった。そんな事を考えなくてもただ鏡に映った顔をかけばいいと思ってやっているうちに着物の左衽のところでまたちょっと迷わされた。自分の科学と芸術とは見たままに描けと命ずる一方で、なんだか絵として見た時に不自然ではないかという気もするし、年取った母がいやがるだろうと思ったので、とうとう右衽にごまかしてしまったが、それでもやっぱり不愉快であった。
この自画像No.1は恐ろしくしわだらけのしかみ面で上目に正面をにらみつけていて、いかにも性急なかんしゃく持ちの人間らしく見えるが、考えてみると自分にもそういう資質がないとは言われない。
それから二三日たってまた第二号の自画像を前のと同大の板へかいてみた。今度は少し顔を斜めにしてやってみると、前とは反対にたいへん温和な、のっぺりした、若々しい顔ができてしまった。妻や子供らはみんな若すぎると言って笑ったが母だけはこのほうがよく似ていると言った。