Classici giapponesi con furigana
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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
Leggi 寺田寅彦随筆集 第一巻 (どんぐり) di 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 203.161 caratteri · 412 schermate
少しはなれて見ると密生したこずえの色が紫色にぼうとけむったように見える。畑の間を縫う小道のそばのところどころに黄ばんだ榛の木のこずえも美しい。
丘の上へ登ってみようと思って道を捜していると池のようなもののそばに出た。さざ波一つ立たない池に映った丘の森の色もまたなく美しいものである。みぎわに茂る葭の断え間に釣りをしている人があった。私の近づく足音を聞くと振り返ってなんだかひどく落ち付かぬふうを見せた。もしこの池で釣魚をする事が禁ぜられてでもいるか、そうでないとすれば、この人はやはり自分のようなたちの、言わばすわりの悪い良心をもった人間だろうと思われた。そして悪い事をしていなくても、人から悪い事をしていると思われはしないかと思うと同時に、実際悪い事をしていると同じ心持ちになるというたちの男かもしれないと思った。そして同病相哀れむ心から私は急いでそこを通り過ぎねばならなかった。
ようやく丘の下の往還に出ると、ちょうどそこから登る坂道があった。登りつめるときれいな芝を植えた斜面から玉川沿いの平野一面を見晴らす事ができた。しかしそれよりも私の目をひいたのは、丘の上の畑の向こう側に柿の大木が幾本となく並んでその葉が一面に紅葉しているのであった。