Classici giapponesi con furigana
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こざくらひめものがたり
小桜姫物語
浅野 和三郎
Leggi 小桜姫物語 (こざくらひめものがたり) di 浅野 和三郎 (あさのわさぶろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 136.097 caratteri · 267 schermate
私は平気で良人の手を握っても見ました。
『随分軽いお手でございますね。』
『イヤ斯うカサカサして居てはさっぱりじゃ。こんな張子細工では今更同棲してもはじまるまい。』
私達夫婦の間にはそんな戯談が口をついて出るところまであっさりした気分が湧いて居ました。爺やの方では一層枯れ切ったもので、ただもううれしくて耐らぬと言った面持で、黙って私達の様子を打ち守っているのでした。
ただ一つ良人にとりての禁物は三崎の話でした。あちらに見ゆる遠景が丁度油壺の附近に似て居りますので、うっかり話頭が籠城時代の事に向いますと、良人の様子が急に沈んで、さも口惜しいと言ったような表情を浮べるのでした。『これは良けない……。』私は急いで話を他に外らしたことでございました。
困ったのは、この時良人も爺やもなかなか帰ろうとしないことで、現世でいうなら二人が二三日私の修行場に滞在するようなことになりました。尤も、それはただ気持だけの話でございます。こちらには昼も夜もないのですから、現世のようにとても幾日とはっきり数える訳には行かないのでございます。その辺がどうも話が大へんにしにくい点でございまして……。