Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

Leggi 山彦乙女 (やまびこおとめ) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 126.360 caratteri · 251 schermate

Aozora Bunko

――すっかりおちついたら、母を呼ぼうか。

彼はこう思うことがある。母に関する限り、殆んど本能的な呵責を感ずる。それはときに、耐えがたいほどであるが、彼はいつも自分に向って、つよく首を振るのであった。

――安倍半之助はもうこの世にはいない、おれはまったくべつの人間だ、……母には母の生活をして貰おう。

八月十七日の夜、八時ころになって、花世がやって来た。ずっとまえから、満月の夜に法王山を見にゆく、という懸案があった。ふしぎに故障があって、それまで果せなかったのを、名月の晩にこそと、改めて約束したものである。

――十五夜というと、よく曇るか降るかするけれど、今年は大丈夫なのよ。

花世はしかつべらしく云った。

――だって去年が閏だったでしょ、閏年のあくる年の中秋には、決して月の曇ることはないんですってよ。

その十五日は朝からしぐれもようで、空はいちめんに重たく雲で閉ざされ、雪でも降るかと思われるほど、寒かった。そして、花世が来たときは、じっさいはらはらと、小雨が降りだしていた。

――大丈夫、いまにきっと晴れますわ。

彼女はさも知ったように頷いた。

――まさか天ですもの、去年が閏だってこと、忘れるわけがないじゃありませんか。