Classici giapponesi con furigana
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げんかくき
幻覚記
豊島 与志雄
Leggi 幻覚記 (げんかくき) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 4700 caratteri · 10 schermate
如何なる人も、何等かの意味で、夜明け前の薄暗い堤防の上を、父のために歩いたことがあるだろう、更に一層、母と二人きりで歩いたことがあるだろう。この感懐、単なる感傷ではない。兄弟姉妹のない一人児の私にとっては、殊にそうである。
二
私の生家は筑後川流域の農村にあり、親戚は多く福岡市内に散在している。私は親戚の家に寄寓して、市内の中学に通い、休暇の間だけ生家に帰った。
田舎では、人は殆んど散歩ということを知らない。日常生活が既に自然の中に営まれていて、戸外の大気に接する必要もないし、外に出ても、珍しい物はないのである。ところが、都会からの客があると、田舎の人は俄に自然に対して眼を覚すかのように、飲食や談話などより先ず、野に連れ出し、農作物を見せ、川の土手を歩かせ、夕陽を眺めさせる。都会からの来客を機縁に、自然の中の宝玉が輝き出すのである。
都会の中学生たる私は、生家に帰ると、もう半ば都会人になっていた。しきりに散歩をした。自然の中のどんなささやかな事物にも、幼時の思い出を伴うので猶更、心惹かるるのだった。時折、都会からの来客があって大勢で外を歩くのが、私には嬉しかった。