Classici giapponesi con furigana
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Leggi 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 193.050 caratteri · 383 schermate
以前は、盆とか暮とかには、夫婦して眼を驚かすような贈り物を持って来、酒が強くて、父とも終日談笑していた事もある。殊に、何の祝いの時であったか「英ちゃんに、別誂えの洋服を頼んでおいたから」と、ぼくを俥に乗せ、南京町の支那人の裁縫師の店までわざわざ仮縫いに連れて行かれたことなどもある。そういう人だけに、ぼくはよけい間が悪かった。きれいな女性の眸も身を刺されるようで、唯、赤面していた。
古川氏は以前から灰色に近い皮膚をして、眼のふちも唇も薄黒かった。その上ぶよぶよと肥大した体つきであった。その巨きな影に、ぼくは圧伏を感じていた。何か、後悔が頻りにわいていた。が、古川氏は、小犬をつかまえて、からかっているような口調で「売れるかね」と訊いたり、又「一日、幾らになるんだい?」と云ったりして、一こう買物には手を出してくれないのだった。
のみならず、何かのことから、父の噂を持ち出して「君のお父っさんの病気は、自業自得だよ」と云い「いったい、君の親父さんてえ人は、思い上がっていたな。自分はまあ、さんざッぱら、やりたい事をやったんだから、いいようなものの、子供にまでこんな真似までさせちゃあ、寝ざめがよくあるまい」