Classici giapponesi con furigana
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あやしのやかた
怪しの館 短編
国枝 史郎
Leggi 怪しの館 短編 (あやしのやかた) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 81.915 caratteri · 165 schermate
泉水に飼われているのだろう。
一団の真っ白の叢が見える。築山の裾に屯ろしている。ユラユラユラユラと揺れ動く。と、芳香が馨って来た。
牡丹が群れ咲いているのらしい。
と、娘の声がした。
「今夜も行かなければなりますまいか」悲しんでいるような声である。
「お行きお行き、行っておくれ」これは武士の声であった。
「それもお前のためなのだから」
「ああ」と娘の声がした。「どうでもよいのでございます。私のためなど、私のためなど」
咽び泣くような声であった。
「ただ私はお父様のために……」
「娘よ」と武士の声がした。「同時に私のためにもなるよ」
「参るどころではございません。お父様のおためになりますのなら」
ここでまたもや声が絶えた。
で、ひっそりと静かである。
ピシッ! と刎ねる音がした。
泉水で鯉でも刎ねたのだろう。
やっぱり静かだ。風も止んだ。
と、また娘の声がした。
「恋の囮! 恋の囮!」
「いや」とすぐに武士の声がした。「幸福の囮! 幸福の囮!」
だが娘は反対らしい。「金の囮でございます!」
「仕方がないのだ、そういうことも。……この世に生きている以上はな」
「でもいつまでもお父様と、一緒に暮らすことが出来ましたら……」