Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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きょうふじょう

恐怖城 他5編

佐左木 俊郎

Leggi 恐怖城 他5編 (きょうふじょう) di 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 143.735 caratteri · 290 schermate

Aozora Bunko

蔦がいまいなくなったって、だれも蔦のことなんか気にかけやしねえ。蔦なんか、猫の子が一匹いなくなったよりももっと、なんでもない人間なんだから」

「そんなことないわ。すぐ知れるわ。そして、真っ先に調べられるのはわたしと正勝ちゃんだわ。そしたらわたし、すぐ顔色が変わってしまうわ。顔色ですぐ分かってしまうわ」

「大丈夫だ。都合のいいことに蔦の奴がおれに書置きをしてあったんだよ。だれか、蔦のいなくなったのを不思議がる奴があったら、蔦の書置きを見せりゃあそれでいいんだ」

正勝はそう言って、一本の手紙を懐から取り出した。

「こんな風に書いてあるんだから……」

紀久子に示しながら、正勝はもう一度それを覗き込んだ。

兄上さま。わたしのたった一人の兄さん。わたしは悲しくてなりません。今日かぎり、しばらくはお目にかかれないのだと思いますと、わたしは悲しくてなりません。それでも、わたしは悲しいのをこらえて、東京へ出ていく決心をいたしました。わたしのたった一人の兄さんを残して、自分だけ東京へ行くのだと思うと、わたしは悲しくてなりません。それでも、いまのうちに悲しいのをがまんして、東京へ出ていったほうがいいと思いますから、わたしは決心してしまいました。