Classici giapponesi con furigana
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あくにんのむすめ
悪人の娘
野村 胡堂
Leggi 悪人の娘 (あくにんのむすめ) di 野村 胡堂 (のむらこどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 13.405 caratteri · 27 schermate
二
「これは容易ならぬ事らしいぞ」
鳴海司郎厩橋の仮橋の上に立って、思わず斯う独り言を申しました。
二
「旦那、それを返して下さい」
暗闇から出た遊び人風の男、頤をグイとしゃくって、懐から手首を出します。
「何、何んだ」
「ヘッヘッヘ、お隠しなすっちゃいけません、橋の上から拾った、紫色の模様のある紙片、それが入用なんで……」
ハンティングを冠った蝙蝠安という恰好、薄寒そうな双子の素袷、三尺を前下りに、麻裏を突っかけた、それにしても、恐ろしく安直な悪党、眼だけは不思議にギョロリと光ります。
「馬鹿をいえ」
「何が馬鹿だい、そいつは乞食の金じゃねエんだ、猫ババを極めこむと唯じゃすまねエぞ、サア悪いことはいわない、素直に返しな」
懐から出た手首が延びて、鳴海司郎の鼻の先を、からかったようにスーッと撫でます。
「何をするコラッ」
挑戦的な相手の様子に、思わず身を引いて構を直そうとする時遅く、無頼漢の左の手は、袖の下からスッと動いて、鳴海司郎の右手に持った百円紙幣を攫ったと思うと、物をも言わずに足を返して、蔵前の方へサッと。
「アッ、泥、泥棒!」
後を追ったところで、どうにもなりません、相手は恐ろしい早足、橋詰まで来て見ると何処へ行ったか影も形もありません。