Classici giapponesi con furigana
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おしえとたびするおとこ
押絵と旅する男
江戸川 乱歩
Leggi 押絵と旅する男 (おしえとたびするおとこ) di 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 17.416 caratteri · 35 schermate
洋服には正しい縫い目があり、適当な場所に粟粒程の釦までつけてあるし、娘の乳のふくらみと云い、腿のあたりの艶めいた曲線と云い、こぼれた緋縮緬、チラと見える肌の色、指には貝殻の様な爪が生えていた。虫眼鏡で覗いて見たら、毛穴や産毛まで、ちゃんと拵えてあるのではないかと思われた程である。
私は押絵と云えば、羽子板の役者の似顔の細工しか見たことがなかったが、そして、羽子板の細工にも、随分精巧なものもあるのだけれど、この押絵は、そんなものとは、まるで比較にもならぬ程、巧緻を極めていたのである。恐らくその道の名人の手に成ったものであろうか。だが、それが私の所謂「奇妙」な点ではなかった。
額全体が余程古いものらしく、背景の泥絵具は所々はげ落ていたし、娘の緋鹿の子も、老人の天鵞絨も、見る影もなく色あせていたけれど、はげ落ち色あせたなりに、名状し難き毒々しさを保ち、ギラギラと、見る者の眼底に焼つく様な生気を持っていたことも、不思議と云えば不思議であった。だが、私の「奇妙」という意味はそれでもない。
それは、若し強て云うならば、押絵の人物が二つとも、生きていたことである。