Classici giapponesi con furigana
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くろかべ
文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁
泉 鏡花
Leggi 文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁 (くろかべ) di 泉 鏡花 (いずみきょうか) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 72.070 caratteri · 143 schermate
あの……蘆がつくようでは、この浦は、はや近うちに、干上って陸になるぞいの。そうもござりましょ。……去年の大地震で、海の底が一体に三尺がとこ上りましての、家々の土地面が三尺たたら踏んで落込みましたもの、の。いま、さいて来た汐も、あれ、御覧じゃい。……海鼠が這うようにちょろちょろと、蘆間をあとへ引きますぞいの。村中が心を合せて、泥浚をせぬ事には、ここの浦は、いまの間に干潟になって、やがて、ただ茫々と蘆ばかりになるぞいの。……)
何だか独言のように言って聞かせて、錆茶釜に踞んで、ぶつぶつ遣るたびに、黒犬の背中を擦ると、犬が、うううう、ぐうぐうと遣る。変に、犬の腹から声を揉出すようで、あ、あの婆さんの、時々ニヤリとする歯が犬に似ている。薄暮合に、熟としている犬の不気味さを、私は始めて知りました。……
(――旦那様方が泊らっしゃった、水戸屋がの、一番に海へ沈んだぞいの。)
靄の下に、また電燈の光を漏らさない、料理旅籠は、古家の甍を黒く、亜鉛屋根が三面に薄りと光って、あらぬ月の影を宿したように見えながら、縁も庇も、すぐあの蛇のような土橋に、庭に吸われて、小さな藤棚の遁げようとする方へ、大く傾いているのでした。