Classici giapponesi con furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Leggi 新書太閤記 (しんしょたいこうき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 200.320 caratteri · 398 schermate
「どうぞ、そうして下さいませ」
「……だが」
と、半兵衛はふと声を落して、
「どうにもならないものが人間の天寿だ。いかにせん、こればかりは」
無念そうに呟いた。その眸を見て、おゆうは、はっと胸をつかれた。なにか、兄はひそかに独り期しているのではあるまいかと。
南禅寺の鐘はのどかに午をつげている。戦国とはいえ、梅が咲けば、梅に杖をひく人影も見え、梅が散れば、梅に啼くうぐいすの声もする。
快いほうとはいいながら、夜に入ると、春もまだ二月、草庵の燈は、半兵衛の咳き入る声に、寒々と揺れた。
ためにおゆうは幾たびか、夜半にも起きて、兄の背をさすり明かした。――ほかに家来もいるが、半兵衛は、
「彼らは一朝自分が戦場にのぞんだとき、自分の馬前を駈ける人々。病骨の背なかなどさすらせては勿体ない」
と気がねして、どうしても、家来の手にはそういうことをさせないのである。
その夜も、彼女は起きて、なおも兄の背をさすったり、台所へ通って、薬を煎じたりしていたが、ふと、板戸の外で、
――ばりッ
と、垣根の古竹を踏み折るような音につづいて、何かひそかに囁きあう声がしたので、ぎょっと耳を澄ましていた。