Classici giapponesi con furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Leggi 新書太閤記 (しんしょたいこうき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 192.758 caratteri · 383 schermate
何でもないようだが、彼の眠り上手のこつも離れ心であった。
焦躁、妄想、執着、疑惑、早急――あらゆる事々のきずなをも、一瞬、両の瞼で断ち切って、一切白紙の心になって寝てしまう。――また、瞬時にして、ぱっと醒める。
これが思うままにできるようになると、醒めるも快、眠るも快、百事、この世は快ならざるものはなくなってくる。
のみならず彼は――彼とても巧い戦や思いどおりな計画ばかりではなく――ずいぶん周囲に間の悪いような失策も度々だったのであるが、そんなときも、その失敗失戦にくよくよとらわれている風は少しもなかった。こんな場合、彼が胸のなかで思い出していることも、
離
の一字だった。
よく人のいう臥薪嘗胆とか、一念没頭とかそんな程度の懸命は、彼にとっては、特別な心がけでなく、日々当然にしている生活だった。――故に、彼にはむしろ、一瞬でも、それから離れて、大生命を息づかせる「離」の心がけの方がはるかに必要だったのである。惹いては、生死ももちろん「離」一字にまかせていた。
わずかな間だった。――半刻も眠ったろうか。
秀吉は起き出した。
階下の厠へ降りてゆく。――と、すぐ詰の間の者が紙燭を掲げて板縁にひざまずいた。