Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Leggi 新書太閤記 (しんしょたいこうき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 192.758 caratteri · 383 schermate

Aozora Bunko

薫風一扇

「さればよ。この首は、今日まで男競べいたした秀吉の見参にも入り、信長の前にも供えらるべきもの。――余りに窶れていては、一旦の籠城にかばかり老いさらばいつるかと、中国武士の荒胆を軽んぜられも致そうか。――さもありては口惜しきゆえ、かくは男をつくりて候ぞや。嗤うな。嗤うな」

と、いって笑った。

迎えが来た。――時刻とみえ、対岸の蛙ヶ鼻に赤い小旗が見え出したという。

「さらば、参ろうか」

宗治はつと立った。

不覚と思いながらも抑えきれずに、この時、衆臣の中から嗚咽がながれた。宗治は耳なき人のように、さっさと、城壁の方へ歩いた。小舟は、新しき藁の莚を敷き、白き死の座を備え、あくまで清浄に、舷を洗って彼を待っていた。

宗治の兄月清入道と、末近左衛門のふたりがさきに乗っていた。

ほかに宗治の郎党難波七郎次郎が櫓を把って控え、介錯人を命ぜられた幸市之丞が端にいた。

薫風一扇

舟は城を離れた。

難波七郎次郎の漕ぐ櫓のあとに、ゆるい波紋が残されてゆく。

「あれよ、殿さまのお舟が」

「真っ白なおすがたで」

「わしらの命にお代りくださるのじゃ」

「勿体なや。勿体なや」

城中五千人のうちの三分の一は領下の百姓老幼であった。