Classici giapponesi con furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Leggi 新書太閤記 (しんしょたいこうき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 200.903 caratteri · 400 schermate
心闇
みな無言で、みな悲涙をためて、ただ黒い濠水の面へ、こみあげる感情をたたきこんでいた。
心闇
夜となると、ここの邸内の古い大池には、蛙の声が喧しい。
沈湎とただ独り、燭にうつむいて、物思わしく在る人に、
(何を考えこむか)
と、蛙の声は、問うて揶揄するごとく、また同情してともに嘆くが如く、或いは、その愚痴を嗤うようにも、聞きようによって、どのようにも聞える。
「たれも入るな」
とでも命じてあるのだろうか、この広い座敷に、燭一つ、光秀一人、ほかに小姓の影すらみえない。
ひそやかに、側を通るのは、仄暗い微風だった。まだ初夏、湿度はあるが、夜風はすずしい。
「…………」
つねにも増して、この夜、この人の顔いろは、すぐれていなかった。甚だしく蒼白い。
燭のゆらぐたび、鬢の毛も立つようにうごいている。それが惨として、そそけ立つかに見えるほど、憂悶の陰がその姿に濃い。
「――ああ」
嘆息は彼の癖であった。何事にまれ胸中を打ち割って他に語るとか、憂いを磊落に霧散してしまうとかいうことのできない彼は、それを独り――ああという一語によってせめてもの自慰としていた。
しかし同じ嘆息にしても、ああ――と満腔から鬱を天へ吐きすてるのもあるし、われとわが身へ、ああと歎いて、世の憂いをいよいよ身一つに蒐めてしまうものとがある。