Classici giapponesi con furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Leggi 新書太閤記 (しんしょたいこうき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 200.903 caratteri · 400 schermate
はおくびにも語ったことはないが、三ばんめの娘伽羅沙の良人細川忠興の父――細川藤孝は酔うとよくこのはなしを持ち出して、光秀の苦笑を求めたものだった。
坂本以来、いや安土以来、彼は初めてなぐさめられた。彼のその夜の眠りは円かであった。あくる日となっても、なお嬉々たる子たちや、貞節な妻の笑顔は、どれほど彼の棘々しい心をなだめていたかしれない。
「やはりわが家はよいな」
沁々と、いまの幸福を顧みてもみる光秀であった。
けれど、一夜を過して、そのために、彼の心の奥のものが、何かの変化を来たしていたろうかといえば、それは少しも変っていなかった。むしろ、より以上胸中の秘事に、べつな野望を加えて、その実行を勇気づけていたかとも思われる。
浪人時代から連れそうて来た糟糠の妻が、いまの境遇に満足しきって、子ども相手に他念ない姿を見ては、
(まだまだこんな程度でおまえの良人は終るものではない。いまに将軍家の御台所とも仰がれる身にしてやるぞ)
と思い、また一族の老幼をながめても、
(やがてみなそれぞれ、天下人のお身内と、諸人から敬われる身になる者たちぞ。こんな田舎びた館からあの安土にも優る所へ住まわせたら、これ以上、どんなに狂喜することだろう)