Classici giapponesi con furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Leggi 新書太閤記 (しんしょたいこうき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 187.757 caratteri · 375 schermate
という声が、彼方に聞えた。
瀬兵衛は、はっと、振り返った。
とたんに、馬は膝を折った。どうと、鞍の上から、彼をも地へ抛り出していた。
「やあ、淵之助めが、俺の身になり代り、八面に敵をうけて戦いおるわよ。――身をもって敵に当り、なおも俺に、落ちよというか」
うれしさ。しかし、涙は出ない。ニコと笑ったようにすら見える。けだし淵之助重定の心境も、彼の心境も、まさしく一つだったからである。
「淵之助っ。死出の道も一つにしようぞ」
彼方へ向け、こう大声を送りながら、両の掌を、地上でこすッた。血糊にぬるぬるする槍の柄が、手に辷ると、自然、全力の発揮を欠くからである。
われから行くまでもなく、敵は早くも寄って来た。閃々、槍を揃えた甲冑の一群は、波状を作して、彼の前に迫り、しばしば、声ばかり発していたが、
「真の瀬兵衛はこれだ。これこそ、敵将清秀っ」
一箇の武者が、喚いて、一歩出た。突ッかけたのである。――が届かない。また一人出た。瀬兵衛の槍は、巻きこんで、叩き伏せ、石突を返して後ろを突いた。
せつな、乱戦となった。人は容易には死なぬものである。幾度か、瀬兵衛のすがたは、朱をあびて、蹌めいたが、豹のごとく、躍ってはまた、敵を斃した。