Classici giapponesi con furigana
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しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
Leggi 新潮記 (しんちょうき) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 155.541 caratteri · 305 schermate
刻はどんどん経っていった。
若い家士が行燈に火をいれ、やがて食膳を運んで来た。粗末なものですが箸をつけて下さい、と云った。干魚を焼いたものに菜汁一椀の膳だった。
客のほうは酒になった。
「遠来の客なものですから」家士は気の毒そうに云った、「どうぞもう暫く」
秀之進は黙って会釈を返した。
行燈は紙がすっかり煤けていて暗かった。安油を使っているとみえ、むせっぽい匂いが籠るうえに、じいじいと音を立てて燃える焔がひっきりなしにはたはたとまたたいている。ひどい蚊で、明けてある庭のほうから舞いこみ、部屋の隅へかたまっていては執念くとびついて来た。
秀之進は閉じた扇子で絶えず蚊を追いながら、坐った位置を変えようともせずじっと暗い庭をみまもっていた。
客間の話し声はますます活溌になるばかりだった。「単刀直入に云おう」とか、「もっと根本に触れて」とかいう声が繰り返される。「事実だ、事実だ、肝心なのは事実に当面することだ」それは老人の声だった、宗兵衛であろう、「事実に当面する」という言葉が頻りに出た。話題の内容まではわからないが「蝦夷」だの「エトロフ」だの「魯西亜」