Classici giapponesi con furigana
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しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
Leggi 新潮記 (しんちょうき) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 155.541 caratteri · 305 schermate
哀訴しているそうだが、溺れる者の藁にすぎぬ、此処でおれが斬らぬことで、自分が今どういう位置にいるかを考えるがいい、大峰と矢田部は貰ったぞ」
梅八はそのあいだずっと寅寿の表情から眼をはなさずにいたが、三人が立ち去ろうとするのをみて、お待ち下さいと呼びとめた。
「いまお武家さまは、わたくしがこの方の口にさそわれて、云ってはならぬことを申したと仰しゃいました」
「云ったよ」
「それはどういう意味でございますか、云ってならぬこととはなんでございます、それを聞かせて下さいまし」
魁介はじろっと梅八を見あげ見おろした。そしてふんと鼻を鳴らし、まるで腹でも立っているように、「自分のことだ、よく考えてみろ」そう云ったまま、二人を促してさっさと庭へおりていった。
梅八は投げだされたように坐り、なんとも云いようのない哀しさにうたれながら、寅寿の顔をみまもりつづけた。そこになにか答えが出て来はしないかというように、……寅寿は黙っていた。俯向いた眉のあたり肩つき、すべてがはげしく緊めつけられるような苦悶に満ちていた。かの女はなにも知らない。結城寅寿という名もはじめて聞く。いま眼の前に見た出来事が、どのような事実を語るものなのかわからない。